小説「新・人間革命」 清新1 2016年年6月15日

前進の活力は、希望から生まれる。
希望の虹は、歓喜ある心に広がる。
山本伸一は、学会が「人材育成の年」と定めた一九七九年(昭和五十四年) 元日付の「聖教新聞」に、「希望の暁鐘」と題する一文を寄稿した。
「御書にいわく『所謂南無妙法蓮華経歓喜の中の大歓喜なり』(七八八ページ)と。
またいわく『歓喜とは善悪共に歓喜なり』(七三五ページ)。またいわく『歓喜踊躍』(七二二ページ)と。
すなわち、苦しみや悲しみさえ、希望と喜びに変えゆくのが、仏法の偉大な功力なのであります。
苦楽は所詮一如であり、むしろ苦難の中にこそ希望と歓喜を見いだしていける人が、厳たる人生の勝利者なのであります」
この一九七九年は、いよいよ「七つの鐘」の総仕上げの年となる。学会は一九三〇年(同五年)の創立を起点に、七年ごとに前進の節を刻んできた。
以来四十九年、目標としてきた第七の鐘が鳴り終わり、さらに新しい出発を期す時が来たのだ。
伸一は、その清新の出発にあたり、強盛なる信心の力によって、無限の「希望」と「歓喜」とを胸中にみなぎらせ、不撓不屈の大前進を開始するよう呼びかけたのである。
元日、彼は、東京・信濃町の学会本部で行われた新年勤行会に出席した。
そして、「七つの鐘」終了の本年を、再び広宣流布への偉大なる起点にしたいとし、力を込めて訴えた。
「長い広宣流布の道程にあっては、幾多の苦渋の嵐を受けるのは、御書に照らして当然の理なのであります。
しかし、私どもには信心がある。信心とは勇気であります。幾多の大偉業も、すべて、この勇気という一点から実現したことを決して忘れてはならない。
勇気のなかに真実の信仰があり、無限の希望と成長があり、時代の変革と新世紀への前進があるのであります」
勇気は、人間を人間たらしめる力である。勇気なくしては、正義も、勝利もない。