小説「新・人間革命」 力走68 2016年年6月14日
四国から帰った翌十四日からも、山本伸一のスケジュールはびっしりと詰まっていた。
教育部の記念勤行会や本部幹部会、ソ連の対外友好文化交流団体連合会(対文連)の議長らとの会談や、東京・八王子圏の代表幹部会、東京支部長会、千葉県支部長会、茨城県支部長会、イギリス・オックスフォード大学のブライアン・R・ウィルソン社会学教授との会談など、片時の休みもなかった。
“今、戦わずして、いつ戦うのだ! 時は今だ! この一瞬こそが、黄金の時だ!”
こう自分に言い聞かせての敢闘であった。
そして、十二月の二十六日には、関東指導に出発したのだ。
栃木県の足利会館を初訪問し、勤行会に出席。
さらに、約十年ぶりに高崎会館を訪問し、この日午後九時前、学会本部に戻った。
嵐吹き荒れる激動の一年であった。創価の松明を掲げ、守り抜いた力走の一年であった。新しき歴史を築いた建設の一年であった。
この一年間で訪問したのは、北は北海道、南は九州まで十方面、一道二府二十五県となり、海外では第四次訪中も果たした。
会談した主な識者や指導者は、国内外で二十数人を数えた。
また、作詞した各部や各地の学会歌は、実に三十曲ほどになっていた。
大晦日の夜、帰宅して、門前に立った伸一は、空を仰いだ。星辰の瞬きが諸天の微笑みのように思えた。
激戦、激闘を重ねた、必死の舵取りの一年が終わろうとしていた。彼の胸中には、微塵の後悔もなかった。ただただ師子の闘魂が、熱く熱くほとばしっていた。
“風よ吹け、波よ立て。われは征くなり”
心燃え立つ伸一の?には、冬の外気が心地よかった。 (この章終わり)