小説「新・人間革命」 清新5 2016年年6月20日

山本伸一は、館内を巡りながら、岩手の県幹部に語り続けた。
「岩手は、ますます強くなってほしい。断じて勝ってほしい。そのために何が大切か。
まず、自分たちは一生懸命にやってきたんだから、これ以上は無理だろう。もう、できないだろうという、あきらめの心を打ち破っていくことです。
いかに困難であるかということばかりに目がゆき、現状に甘んじて良しとしてしまう。それは、戦わずして心の魔に敗れてしまっていることになる。
背伸びをする必要はありません。焦る必要もありません。
しかし、必ず、このように広宣流布の道を切り開いていくという未来図を描き、目標を決めて、成就していくんです。
時代は変わります。いや、変えることができるんです。
最初にお題目を唱えられたのは日蓮大聖人ただお一人だったではありませんか。そこから一切が広がっていった。
現代にあっても、敗戦間近の焼け野原に戸田先生が一人立たれたところから、
戦後の広宣流布は始まっている。当時は、誰も、今日の学会の姿など、想像さえできなかったはずです。
岩手を必ず広宣流布の模範の県にしよう。断じて勝とうと心を決めるんです。
そして祈るんです。必死に祈るんです。智慧を涌現しながら、果敢に行動するんです。
動いた分だけ、友情も、同志の連帯も、広宣流布も広がっていきます。そこに勝利がある。
心を定め、祈って、動く──それを粘り強く、歓喜をもって実践する。
単純なことのようだが、これが、活動にあっても、人生にあっても、勝利への不変の方程式なんです」
皆、真剣な面持ちで話を聴いていた。
伸一は、二階の大広間に入ると、題目を三唱し、そのまま県の幹部と懇談に入った。
「岩手での活動の大変さは、よくわかります。県の面積としては日本一広い。交通の便もいいとはいえない。
冬は長く寒い。旧習も深い。だから、その岩手が変われば、日本が変わる。大変ななかで大変革の波を起こすのが、私たちの広宣流布の戦いです」