小説「新・人間革命」 清新7 2016年年6月22日

山本伸一は、水沢文化会館の大広間で、白蓮グループ、創価班、学生部の代表、運営役員などと次々に記念のカメラに納まった。
この日は、美しい夕焼けとなった。
燃えるような夕映えのなか、新年を記念する岩手県代表幹部会に出席するため、県内各地から続々とメンバーが集ってきた。
伸一は、午後五時から二十人ほどの代表と懇親会をもち、幹部の姿勢について語った。
「岩手は明るく、伸び伸びと進んでいくことが大事だよ。気候風土も厳しく、大変ななかで、皆、頑張っているんだもの、温かく包み込んでいくんです。
また、リーダーは、同志の幸せのためには、真剣に、誠実に、全力で行動していくことです」
それから彼は、代表幹部会に臨んだ。
会場は求道の熱気にあふれていた。
岩手にも、宗門による迫害の吹雪が荒れ狂い、同志たちは歯を食いしばりながら、苦渋と忍耐の日々を過ごしてきた。
青森との県境にある二戸から駆けつけてきた、安房由光という「聖教新聞」の販売店を営む青年がいた。
二戸では、前年十二月初めに宗門の寺院が建ち、これを契機に、学会への攻撃が激しさを増していた。
息子が他の方面で宗門の寺の住職をしている壮年幹部が、同志を欺き、水面下で学会批判を重ね、純粋な学会員をたぶらかして、檀徒になるように促してきたのだ。
赴任してきた住職は、この男と共謀し、学会員への陰湿な攻撃を繰り返した。
衣の権威を笠に着て、真面目に広宣流布の活動に励んでいる仏子を見下し、苦しめてきたのである。
年が明けると、伸一の岩手訪問を狙ったかのように、何人かの脱会届が出された。
安房らは、日々、悔し涙をのみながら攻防戦を続けた。片時でも気を抜けば、大切な会員が魔の軍勢の餌食となった。
勝利の旭日は、安堵も、瞬時の油断も許さぬ間断なき闘争を制した者の頭上にこそ、燦然と昇り輝くのだ。