小説「新・人間革命」 清新12 2016年年6月28日

山本伸一が「明日の自由勤行会には、何人ぐらいの方が、お見えになるかね」と尋ねると、山中暉男が「数千人は来ると思います」と答えた。
「そうか。ほぼ同時刻に大挙して会員の皆さんが訪れた場合、どうすればスムーズに会場の出入りができるかがポイントです。
特に混乱するのが玄関だ。
また、履物の間違いがないように対策を考えよう。
学会の会館に喜んでやって来て、自分の靴を間違えて履かれていかれたりしたら、歓喜も一瞬にして冷めてしまいます。
それと、会館の建物のなかに入りきれない方々の待機場所をどうするかです。
あと、近隣はもとより、駅にもしかるべき幹部があいさつに行きなさい。
普段の何倍もの乗降客になるので、切符だって足りなくなってしまうかもしれないからね」
伸一は、矢継ぎ早に指示していった。
「私は、管理者室に待機していて、大広間がいっぱいになったら勤行を始めます。
何度でも行います。ともかく、明日の勤行会は大事です。無事故、大成功を祈って、皆で真剣に唱題していこう」
伸一が陣頭指揮しての準備となった。
一月十二日の早朝、水沢文化会館には、既に何人もの学会員の姿があった。
「自由勤行会」という名称を初めて聞いた人が多く、こう話し合ったのだ。
「山本先生が水沢文化会館で一緒に勤行をしてくださるという話だ。朝の勤行にちがいない。
それなら午前六時前には、会館に着いていた方がいいだろう」
連絡を流した人が、嬉しさのあまり、詳細を伝え忘れてしまったようだ。
多忙を極める時ほど、慎重で丁寧な物事への対処が求められる。一つの手違いが、大きな混乱につながりかねないからだ。
ほどなく、帽子、襟巻き、防寒着に身を固めた同志が、寒風のなか、欣喜雀躍しながら、続々と集って来た。
伸一は、参加者に温かい飲み物を用意するよう指示した。