小説「新・人間革命」 清新46 2016年年8月8日

文豪トルストイが述べた人間が宗教なしでは生きられない理由を、弟子のビリューコフは、次の六つにまとめている。(注)
「第一に、宗教のみが善悪の決定を与えるからである」
「第二に、宗教なしでは人間は自分のしていることが善いか悪いかを知ることが決してできないからである」
「第三に、ただ宗教のみが利己主義をほろぼすからである」
「第四に、宗教のみが死の恐怖を打ち消すからである」
「第五に、宗教のみが人間に生の意義を与えるからである」
「第六に、宗教のみが人間の平等を樹立するからである」
──それは、人間の幸福、世界の平和を実現するうえで、宗教の存在が不可欠であることを示すものといえよう。
ウィルソン教授と山本伸一との会談では、今後、宗教が担うべき使命などについて、意見の交換が行われた。
そのなかで伸一は、こう要望した。
「ウィルソン先生にお願いしたいことは、第三者の立場から、客観的に見て創価学会へのご意見があれば、忌憚なく言っていただきたいということです。
二十一世紀に向かう人類のための宗教として、学会が健全に発展していくために、私は謙虚に耳を傾けたいと思っております」
教授は、目を輝かせながら語った。
「会長の、そうした発言自体が、宗教者として実に進歩的なものであり、極めて大事な姿勢です」
宗教は、過去に寄りかかり、原理主義教条主義に陥り、時代を活性化していく活力を失ってしまうのが常であるからだという。
教授は、「今後とも、会長とは率直に意見交換していくことを希望します」と述べた。
そして、近い将来、さらに会談を重ね、それを対談集として出版していきたいということで、二人は意見の一致をみたのである。
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 ビリューコフ著『大トルストイI』原久一郎訳、勁草書房