小説「新・人間革命」 清新57 2016年年8月20日
山本伸一の三度目となる今回のインド訪問は、「七つの鐘」の掉尾を飾るとともに、二十一世紀への新しい旅立ちとなる、ひときわ深い意義をもつ世界旅であった。
彼は、その記念すべき訪問の出発地を、どこにすべきかを考えた時、即座に九州しかないと思った。
「願わくは、今日の意気と覇気とをもって、日本民衆を救うとともに、東洋の民衆を救ってもらいたい!」
そして、万感の思いを込めて、特に男子青年に対して、「九州男児、よろしく頼む!」と、東洋広布を託したのである。
伸一は、「七つの鐘」が鳴り終わる年を迎えた今、二十一世紀への世界広布の新出発もまた、「先駆」を掲げる九州の同志と共に開始したかったのである。
彼が九州研修道場に到着したのは、前日の一月三十一日午後六時のことであった。
九州の代表幹部らと懇談し、勤行したあと、彼は一人で思索のひとときを過ごした。
外は、しとしとと冷たい雨が降り、それが、かえって静寂を募らせていた。
彼は、「七つの鐘」終了後の、学会と広宣流布の未来へ、思いを巡らしていった。
そう考えると、今後、自分が最も力を注ぐべきは世界広布であり、人類の平和の大道を切り開くことではないかと、伸一は思った。