小説「新・人間革命」源流 2 2016年9月2日

山本伸一たちの乗ったジェット機は安定飛行を続け、台湾上空を過ぎて、香港に近づきつつあった。伸一は、名操縦の機長に感謝の思いを込めて、自著に句を認めて贈った。
「祈るらむ いざや幸あれ 翼びと」
その脇に、「お世話になりました 貴兄のご健康とご活躍を祈ります」と書き添えた。
鹿児島空港から三時間余、現地時間の午後一時二十分に、一行の搭乗機は香港の啓徳空港に到着した。
空港には、香港中文大学中国文化研究所の陳荊和所長をはじめ、香港のSGI(創価学会インタナショナル)メンバーらが出迎えてくれた。
伸一の香港訪問は一九七四年(昭和四十九年)以来、五年ぶりである。
折から旧正月の期間とあって、街には、新年を祝う「恭賀新禧」の文字や赤いランタンが飾られ、行き交う人びとで賑わっていた。
伸一は、宿舎のホテルに着くと、すぐに九竜塘(カオルントン)にある香港会館に向かった。
午後三時、会館に到着した彼は、居合わせた三十人ほどのメンバーと、庭で記念のカメラに納まった。
「皆さんとお会いできて嬉しい!」
メンバーのなかには、香港中文大学に留学している日本人学生や近隣の人たちがいた。
「では、一緒に勤行をしましょう」と言って、会館一階の仏間に移動し、勤行が始まった。
そして、そのまま、懇談となった。
留学生には、「留学の期間は、あっという間です。
一日一日を大切にしながら、しっかり勉強に励んでください」と訴えた。
また、近隣の人たちには、こう語った。
「真剣な唱題と学会活動の持続、仏法研鑽への弛みない努力が大事になります。
生まれたばかりの子どもは、一週間や十日では大人にはならない。同様に、十年、二十年と信・行・学の実践を続けるなかで、考えもしなかった幸福境涯が開けるものなんです。
信心を通し、物心ともに幸せを築いていくことが、仏法の正しさの証明になります。皆さんの幸福即広布であり、実証即勝利です」