小説「新・人間革命」源流 3 2016年9月3日

山本伸一が香港会館で懇談を終えて外へ出ると、数十人のメンバーが、彼の訪問を知って集まっていた。既に辺りは暮色に染まり始めた。
伸一は、「わざわざ、ありがとう!」と言って皆と握手を交わし、記念撮影をした。
そこに、三人の子どもを連れた壮年と婦人が駆け寄ってきた。
「你好!」(こんにちは)──伸一は、広東語で呼びかけ、大きく腕を広げ、三人の子どもを一緒に抱き締めた。そして一家と、記念のカメラに納まった。
同行していた通訳の周志英によると、この一家は林さんといい、子どもは十一歳の四女と九歳の五女、六歳の長男である。
林さん一家は、伸一が香港に来たことを聞くと、なんとしても会いたいと思い、会館の前にある公園で待っていたという。
伸一は、子どもたちに言った。
「せっかく来たんだから、今日は公園で一緒に遊ぼうよ。私は、皆さんにお会いしたかったんです。
世界の子どもたちと、お友達になりたいんです。特に今年は、国連が定めた『国際児童年』ですから」
彼は、男の子の手を引いて歩きながら、名前を聞いた。宣廣というのが、少年の名であった。
公園に着くと、まずシーソーで遊んだ。一方には一人で伸一が乗り、もう一方に、子ども三人が一緒に乗った。
「みんな重いな。じゃあ行くよ! それっ、ギッコン! バッタン!」
子どもたちは、終始、大きな口を開け、声をあげて笑っていた。
それからブランコに乗った。伸一は、宣廣のブランコを揺らしながら、語っていった。
「しっかり勉強するんだよ。そして頑張って、みんな大学に行こうね。
お父さんやお母さんのためにも偉くなって、しっかり親孝行するんだよ。
お父さん、お母さんを大切にできる人が、人間として立派な人なんだよ。これは、世界共通です」