小説「新・人間革命」源流 11 2016年9月14日

大河内敬一が、最初にインドに関心をもったのは、幼いころに、近所の学会員で、世界を舞台に活躍している創作舞踊家夫妻から、「インドはいいところだよ」と聞かされたことだった。
やがて、インドのニュースなどに、よく耳を傾けるようになった。
幼少期に母親と共に入会した彼は、学会の庭で育ってきた。
高校時代には、山本伸一が高等部員に贈った『大白蓮華』の巻頭言「鳳雛よ未来に羽ばたけ」を指針として活動に励んだ。
そのなかに心躍る一節があった。
「今こそ、世界平和、すなわち世界広布のため、全力を傾注して、前進せねばならぬ時代なのである。
私は、今日まで、全魂を尽くして、諸君のために、道を切り拓いてきた。
また、これからも、拓いていく決心である」
高校二年の時、地理の授業で、興味のある国について調べるという宿題が出た。
仏教発祥の国であり、子どものころから関心をもっていたインドを選んだ。
インドは、長い間、イギリスの植民地として支配、搾取され、貧困層も多かった。
当時、人口は五億を超えていた。
彼は、インドのために何かしたいと考えるようになった。
大河内は、よく高等部の仲間たちと、広宣流布の未来図を語り合った。「ぼくたちの使命は、日本の広布よりも、むしろ世界広布にあるんじゃないかな」との友人の意見に、彼も同感した。
そして、世界雄飛への夢が、次第に大きく膨らんでいった。
ある時、大河内は、友人たちに語った。
日蓮大聖人は、インドに始まった仏教が東の日本に渡り、今度は大聖人の仏法が、日本から東洋へ、インドへと帰っていくと、『仏法西還』を確信されている。
でも、それは、自然にそうなるということじゃないと思う。
誰かが使命を自覚して、行動を起こさなければ、その実現はない。
ぼくは、将来、インドに行き、インド広布に一生を捧げたいと思っているんだ」
決意の種子があってこそ、果実は実る。