小説「新・人間革命」源流 19 2016年9月23日

山本伸一が「インド文化研究会」のメンバーと共にローディー庭園を散策していると、少年たち数人が来て、少し離れたところから珍しそうに一行を見ていた。
伸一は、手招きし、「みんなで写真を撮ろう」と声をかけた。大槻明晴がヒンディー語で通訳した。
はにかむ少年もいれば、歓声をあげる少年もいた。一緒にカメラに納まった。
彼は、お土産に持ってきた、創価大学のバッジを子どもたちに渡していった。
「私たちは、日本から来ました。これは、私が創立した大学のバッジです。大きくなったら、必ず日本に来てください」
伸一は、それぞれの家族のことなどを聞いていった。
父親の職業は、多くがドライバーであった。語らいが弾んだ。少年たちは、日本だと中学二年にあたる年代である。
「みんなは、友だちなの?」
少年の一人が、白い歯を見せて答えた。
「いつも一緒にいるんで兄弟みたいです」
「良い友だちをもつことは、人間としていちばん幸せなことなんだよ。一生の財産になります。
良い友だちがいれば、日々も楽しい。また、互いに励まし合えるから、辛いことや嫌なことがあっても、負けないで強く生きることができる。
しかし、独りぼっちだと、寂しいし、心は弱くなっていきます。
また、悪い友だちと付き合っていれば、いつの間にか、自分も影響され、悪いことをしてしまうようになる。
だから、互いに良い友だちでいてください」
伸一は、こう言いながら、さらに、オレンジやボールペンを彼らに配った。
小柄な少年が、元気に尋ねた。
「写真ができたら、もらえますか」
「わかりました。必ず送ります」
同行の幹部が、皆の住所と名前を控えた。
少年たちを見ながら、伸一は確信した。
彼らは、将来、日本人といえば、今日のことを思い出すだろう。
語り合えば、心が響き合う。世界が友情で結ばれるならば、それは、世界平和の確たる基盤となる