小説「新・人間革命」源流 27 2016年10月3日

山本伸一は、同じテーブルに着いたメンバーや、あいさつに訪れる人たちと語らい、時に相談にものり、激励を重ねた。
自分は地域の仏法のリーダーだが、信仰体験も指導力も乏しく、指導に際して自信がもてずに困っているという質問もあった。
「高みから人を引っ張っていこうなどと考える必要はありません。
皆の輪の中に入り、一緒に広宣流布をめざしていこうと、進むべき方向を示していくのが指導なんです。
また、なぜ勤行をするのか”“なぜ信心をすると周囲から反対されるのかなど、皆の疑問に、なかなかうまく答えられないこともあるでしょう。
そうした時には、まず自ら真剣に教学を研鑽していくことです。
人に教え、納得させなければならないというテーマがある時、研鑽は最もはかどり、自分の理解も深まるものなんです。
人を懸命に育てようとする時、いちばん成長しているのは自分なんです。
ともあれ、行き詰まったら、真剣に唱題し、思索していくことです。
仏法では『以信代慧』(信を以って慧に代える)と説いています。
強盛に祈れば智慧が湧く。
誰よりも御本尊を信じ、自分を信じて、唱題第一に進んでいくんですよ」
また伸一は、壮年の一人に訴えた。
釈尊の成道の地・インドで、今、真実の仏法を人びとに弘めようと、頑張っておられる。
これは、決して偶然ではありません。
あなたは、いろいろな悩みをかかえ、それを解決したいために信心を始めたと思っているかもしれないが、そんなことは一つの現象にすぎません。
あなたが、信心をした本当の意味は、地涌の菩薩としてインドの広宣流布をする使命を担っているからなんです。
広布の使命に生き抜いていくなかに、最高の幸福境涯があり、人生の崩れざる勝利があるんです」
壮年は人生の本当の意味を初めて知った思いがした。使命に目覚める時、人生の新たなる価値創造の道が開かれ、世界は一変する。