小説「新・人間革命」源流 37 2016年10月15日

二月八日の午後八時から、山本伸一主催の答礼宴が、ニューデリーのアショーカホテルで開かれた。
答礼宴には、ICCR(インド文化関係評議会)のカラン・シン副会長夫妻、デリー市長夫妻をはじめ各界代表約五十人が出席した。
伸一は、峯子と共に感謝の言葉を述べながら、一人ひとりを迎えた。
答礼宴での語らいは弾み、なかでもシン副会長とは二時間ほど意見交換した。
副会長は、長身で、年齢は伸一よりも三歳若く、エネルギッシュであった。
ジャンム・カシミール州の州知事を経て三十六歳で下院議員となり、当時、インド史上最年少で閣僚となっている。
また、ヒンズー教をはじめ、宗教、哲学、科学への造詣も深い知識人である。
二人は、インドの神々と仏法で説く十界論との関係や、宗教の根本となる本尊について語り合った。
この対話は、インドの精神的土壌を理解するうえでも、ヒンズー教を知るうえでも意義ある語らいとなった。
答礼宴のあいさつで伸一は、ICCRの関係者らに謝意を表し、文化・教育次元での交流こそ、国際的な友好深化を着実に進める道であると強調。
人間と人間の触れ合いが、世界を結ぶ不可欠な要件になることを訴えた。
次いで、シン副会長がマイクに向かった。
「人類は、歴史の重大な岐路に立っております。良き伝統が失われ、新しい生活様式が取って代わりました。
また、科学技術の進歩は、人間の幸・不幸の両面をもたらし得るものです。
善用すれば、世界の貧困や不幸を除く力となるが、誤用すれば、人間を地上から抹殺する力ともなる。
しかも人類は今、核戦争の危機を迎えています。
大事なことは、この事態を生んだのは外的な問題だけではなく、人間の内面にこそ、大きな要因があるということです。
この危機をいかに回避するか――人類は最後の選択に直面しているといえましょう」
真剣な憂慮が、新しき未来の道を開く。