小説「新・人間革命」源流 39 2016年10月18日
山本伸一は、日々、インドの指導者たちと会い、意見交換することが楽しみであった。
二月九日──空は澄み渡っていた。
官邸は、緑の多い官庁街の一角に立つ、白亜の清楚な建物であった。
伸一が、副大統領に人生のモットーを尋ねると、即座に、「人間的であること、精神的であること、道徳的であることの三つです」との答えが返ってきた。
さらに、人生を生きるうえでも、政治を行ううえでも、「人格の純粋性」が大切であることを強調した。
また、この年が「国際児童年」であることから、子どもについてのインドの課題を尋ねた。
「インドの子どもも、世界の子どもも、第一の問題は健康の増進です。そして、そのために十分な医療、薬品、食糧が不可欠です」
副大統領は、まず“生きる”ことを確保する必要性を訴えたのだ。
世界は、先進諸国のように、飽食で医療施設にも恵まれた国ばかりではない。発展途上国には十分に食べることができず、健康を維持できぬ子どもがたくさんいる。
子どもたちの生命と生活を守ることは、常に世界が急務とすべきテーマである。