小説「新・人間革命」源流 48 2016年10月28日

訪印団一行の歓迎宴が一段落したころ、ゴエンカ会長はいたく恐縮した表情で、山本伸一に伝えた。
「誠に申し訳ありませんが、孫娘の結婚披露宴にまいりますので、一足お先に失礼させていただきます」
明日が愛する孫娘の結婚披露宴であり、夜行列車で式典会場に向かったのである。
人づてに聞いた話では、インドの結婚式は盛大で、披露宴の一週間ほど前から祝いの催しが始まるという。
そのなかを、披露宴前日の夜まで時間をとって歓迎してくれたのだ。
伸一は、会長の人間に触れた思いがした。信義には信義で応えたいと強く思った。インドには、悠久の歴史がある。
十日午後、伸一たちは、ニューデリーのジャンパット通りにあるインド国立博物館を訪問した。
石器時代に始まり、インダス文明の都市遺跡であるハラッパーとモヘンジョダロの発掘物、マウリヤ朝アショーカ王やクシャン朝のカニシカ王グプタ朝などの各時代の文化遺産が展示されていた。
彫刻、絵画、コイン、武具、織物、宝石、伝統芸術作品など、どれも貴重な品々である。
館内を見学した伸一は、館長のM・R・バナルジ博士と会談した。長年、考古学の研究に携わり、多くの文化遺跡の発掘作業を行ってきた館長は、目を細めて語った。
「発掘をしていて最も嬉しかったことは、過去にインドで鉄器が製造されていたことがわかり、インドの鉄器時代が明らかになったことです」
発掘作業は、根気と忍耐の作業である。しかし、この作業を通して人類の歴史が一つ一つ解明されていく。
戸田城聖は、よく「人材を発掘せよ」と語った。それもまた、家庭訪問を重ね、対話を積み重ねていく、まことに地道な忍耐の作業である。
だが、人材という宝の発掘こそが、広宣流布の未来を開く黄金の光となる。