小説「新・人間革命」源流 63 2016年11月16日
二人は、意見が異なることもあったが、平和、非暴力、真理の探究という信念によって結ばれた「真の友」であった。
ここに近代インドの夜明けを開いた精神の光源があるといえよう。
図書贈呈式には、多数の教職員、学生が参加した。
グプタ副総長があいさつに立ち、少し高い声で流れるように語り始めた。
「タゴールは、一九一六年(大正五年)に日本を訪れた時、短い期間でしたが、日本文化に深い感銘を受けたようです」
交流は、魂を触発し、眼を開かせる。異文化との交わりのなかにこそ発展がある。
そして、こう述べて話を結んだ。
「タゴールへの日本文化の影響は、近代における日印文化交流の第一歩と意義づけられるのではないかと思います。
歴史を見ても、政治的な連帯は決して長続きしません。
しかし、文化の連帯には永続性があります」
文化は、人間の精神を触発し、心を結び合う。ゆえに学会は、文化の大道を開き進む。
そのあと、“ウットリオ”と呼ばれるストールに似た細長い華麗な布が、大学関係者から訪印団の首にかけられた。
これは、タゴールによって始められたとされる、最高の賓客を迎える際の儀式であるという。
また、タゴールの肖像写真や直筆の詩の写真など、真心の記念品も一行に贈られた。
小説『新・人間革命』の引用文献