小説「新・人間革命」源流 65 2016年11月18日

「さあ、今日も道を開こう! 友好の橋を架けよう!」
二月十五日、こう言って山本伸一は、宿舎のホテルからカルカッタ郊外のナレンドラプールにある全寮制の学園ラマクリシュナ・ミッションへ向かった。
小学生から大学生まで一貫教育を行う、男子だけの学校である。
校内には、豊かな緑に囲まれるようにして、校舎、グラウンド、各種農場、養鶏場、技能訓練所、寄宿舎などがあった。
案内してくれた人の話では、知識だけでなく、実用的な技術の習得も取り入れ、調和のとれた人間教育をめざしているという。
一行は、キャンパスを視察したあと、小学部の授業を参観した。
一クラス二十五人で、ベンガル語の授業が行われていた。
伸一は、教師に「少し、児童の皆さんのお話を聞かせていただいてよろしいです
か」と許可を求め、教室中央の空いている席に座って語り合った。
「将来、何になりたいですか」と尋ねると、目を輝かせて、医師や教師になりたいと答える。
その言葉には、人のため、社会のために生きたいという純粋な思いがあふれている。
エゴの殻を破り、人びとの力になろうとの自覚と使命感を育むことに、人間教育の重要な眼目がある。
伸一は、子どもたちに言った。
「未来は、皆さんの腕の中にあります。よく学び、体を鍛え、インドを担う立派な人になってください」
引き続いて会議室で行われた教員、児童・生徒との懇談に臨んだ。その席で彼は語った。
「私どもの初代会長・牧口常三郎先生は、教育者でした。学校が実生活から遊離し、学習に偏重していることを憂慮し、今から七十年以上も前に、改革案として『半日学校制度』を提唱しています。
それは、貴学園のめざすものと、軌を一にするものです」
教師たちは、その先見性に驚嘆の表情を浮かべた。創価教育は世界という舞台でこそ、真価が明らかになっていくにちがいない。