小説「新・人間革命」源流 66 2016年11月19日

ラマクリシュナ・ミッション学園を視察した山本伸一たちは、視覚に障がいがある人を支援する付属の学校も訪問した。
自身も目が不自由な校長が、柔和な笑みを浮かべ、伸一と握手を交わし、実技訓練所へ案内してくれた。
生徒たちは、手探りでボルトとナットの組み立て作業などに励んでいた。
伸一は、その様子を見ながら、生徒に語りかけた。
「こうして挑戦していること自体、すごいことなんです。
皆さんが技術を習得し、社会で活躍できるようになれば、目の不自由な多くの人に希望の光を送ることになります」
見学を終えると、校長、教員と共に、生徒の代表が見送りに出てきた。
伸一は、その生徒の一人を抱きかかえながら言った。
「不自由な目で生き抜いていくことは、人一倍、努力も必要であり、苦労も多い
ことでしょう。
しかし、だからこそ、その人生は最も崇高なんです。誇りをもって、さらに、さらに、偉大なわが人生を進んでください。
人間は、皆、平等です。実は、誰もが、さまざまな試練や困難と戦っています。
そのなかで、自分自身でどう希望をつくり、雄々しく生き抜いていくかです。これをやり抜いた人が真実の人生の勝利者なんです」
生徒は、伸一に顔を向け、通訳が伝える言葉に頷きながら、耳を澄ましていた。
「負けてはいけません。断じて勝ってください。勝つんですよ。人は、自分の心に敗れることで、不幸になってしまう。
私は、あなたたちの勝利を祈っています」
彼は、なんとしても、生徒たちの心に赤々とした勇気の火をともしたかったのである。
さらに、校長の手を固く握り締めながら、力を込めて訴えた。
「この方々は、世界の宝です。インドの希望の星となります。人生の勝利の栄冠を頂く人に育み、世に送り出してください」
「どうか、また来てください!」
こう言って盛んに手を振る生徒たちの目には、涙があふれていた。