小説「新・人間革命」 大山 五十一 2017年3月3日

本部幹部会で山本伸一は、新会長の十条潔の登壇に先立ってあいさつした。
マイクに向かうと、皆、緊張した面持ちで凝視した。
「そんな怖い顔で睨みつけないで。新会長誕生のお祝いなんだから。
それに、私も十九年間、会長として頑張ってきたんですから、笑顔を浮かべて、『お疲れさまでした』ぐらい言ってくれてもいいんじゃないの」
彼のユーモアに大爆笑が広がった。会場の重たかった空気は、一瞬にして軽くなった。
伸一は言葉をついだ。
「『七つの鐘』──ここには、戸田第二代会長の、広宣流布への強い、強い決意が込められていた。
それは、この終了までに、広宣流布の大いなる世界的展開の基礎をつくっておきたいということであった。
その『七つの鐘』の総仕上げを、御本尊の御力と全同志の健気なる努力によって成し遂げることができました。
この席をお借りして全会員の皆様に心から感謝申し上げます。
一人の指導者がいつまでも指揮を執っていることは、永続性を維持していくうえで、どうしても改めていかなければならない。
その意味から、未来を展望し、今回の新たな出発となった次第であります。
十条新会長は、私よりも少し年上です。
年齢の下の人にバトンタッチする方が自然かもしれませんが、学会の組織は大きい。
したがって分別盛りで、学会の草創期から共に苦労して歴史を築いてきた人が会長に選出され、大変に嬉しく、安心いたしております。
新会長は、非常に几帳面で責任感が強く、公平であり、体も人一倍頑健です。
一方、森川新理事長は、私や十条新会長の先輩でもあり、一緒に戸田先生の後継を担ってきた一人です。
あまり目立たなかったが、信心の姿勢は抜きん出ています。
どうか、新会長、新理事長を中心に、異体同心の信心で大いなる奮闘をお願いします」
大聖人は「異体同心なれば万事を成じ」(御書一四六三ページ)と記されている。
この御文にこそ広宣流布実現の要諦がある。