小説「新・人間革命」 雌伏 二十二 2017年4月19日

八月二十七日、山本伸一は、長野研修道場から小諸文化会館を訪れた。
ここでも三回にわたって、三百人ほどの人たちと記念撮影をし、さらに代表と勤行し、懇談した。
伸一は、どこまでも題目第一に、「勇敢なる信心を! 地道なる信心を!」と訴えた。
研修道場に帰ったのは、夜九時近かった。
二十八日は、長野滞在の最終日である。
この日も研修道場を見学に来た人たちと十数回にわたって記念撮影し、懇談や家庭訪問を重ねた。
その語らいのなかで、県長の斉田高志に語った。
「長野研修道場は、地の利も良いし、夏は涼しく、美しい自然に恵まれている。
これからは、全国、全世界の同志がここに集い、研修会も盛んに行われ、世界の人びとの憧れの地となるでしょう。
したがって、その研修道場のある長野県創価学会もまた、世界一の人材山脈がそびえ、世界一の人間共和の模範となる組織をめざしてほしい。
世界の同志から、『信心は長野に学べ!』と言われるようになってもらいたいというのが、私の願いなんです。
それには団結しかない。それぞれの地域の特色を最大限に生かしながら、広宣流布のために、皆が心を一つにしていくことです。
そうしていくには、県長が同志のために必死に尽くすことです。
皆が、あの県長は、私たちのために、ここまで気を配ってくれるのか”“ここまで献身してくれるのかと思ってこそ、心を合わせ、協力してくれる。そこに団結が生まれるんです。
リーダーが怠惰でいいかげんな姿勢であれば、人はついてこないし、団結もできない。
そうなれば会員がかわいそうです。
真剣で、誠実であることが、人びとの信頼につながっていきます。懸命に走り抜くんだよ」
人材の育成は、来る日も来る日も、一人ひとりの心田に発心の種子を植える作業から始まる。
伸一は、長野滞在中、身をもってそれを教えようとしてきたのである。
行動に勝る、人を育むための教科書はない。