小説「新・人間革命」 雌伏 二十三 2017年4月20日

山本伸一は、長野の同志に対して、全精魂を注いで激励に次ぐ激励を重ね、八月二十八日、敢闘の九日間を過ごして東京へ戻った。
この長野訪問は、長野広布の歩みのうえでも、創価学会の歴史のうえでも、時代を画する新しいスタートとなった。
しかし、それが「聖教新聞」に大きく報道されることはなかった。
功労者宅への訪問が、二面などに、わずかな行数で報じられたにすぎなかった。
伸一は、翌年も、翌々年も長野研修道場を訪問し、ここから清新なる広布の波動を起こしていくことになる。
同研修道場での研修は、年ごとに規模を大きくし、充実したものになっていった。
中心幹部が集っての全国最高協議会をはじめ、各方面、各部の研修会、世界のメンバーの研修会などが活発に開催された。
伸一も、メンバーの要請を受けて出席し、共に錬磨の汗を流した。そして、この研修会は、学会の新しき伝統行事となり、広布伸展の原動力となっていくのである。
また、ここには、キルギスの著名な作家チンギス・アイトマートフや、米デラウェア大学のデイビッド・ノートン教授、米インタナショナル大学のデイル・ベセル教授、米ジョン・デューイ協会のジム・ガリソン会長とラリー・ヒックマン前会長、中国・華南師範大学の顔沢賢学長、インドのガンジー記念館のラダクリシュナン館長など、世界の識者も多数訪れ、平和・教育・文化交流の舞台となっていった。
伸一が戸田城聖の精神と偉業を永遠に記し伝えることを誓った後継の天地・軽井沢は、新しき前進と創造の電源の地となったのだ。
彼が一九九三年(平成五年)八月六日、小説『新・人間革命』を起稿したのも、長野研修道場であった。
長野の同志は、この研修道場での伸一との出会いと共戦を、最高、最大の誇りとし、果敢に地域広布の大道を開いてきた。
師子の誇りこそ、不撓不屈の闘魂となり、勇気の光源となる。そして、勝利の大力となる。