小説「新・人間革命」 雌伏 二十八 2017年4月26日

山本伸一は、十一月十六日の本部幹部会は学会創立四十九周年を記念する式典であるだけに、わずかな時間でも出席し、同志と共に新しい広宣流布のスタートを切りたかった。
彼は、会合の途中で入場した。大多数の参加者が、久しぶりに伸一の姿を目にした。
揺るがさんばかりの大拍手が場内を圧した。
彼は、長い話をすることは自粛し、上着を脱ぎ、扇を手に壇上の中央に立った。
「今日は、学会歌の指揮を執ります。『威風堂々の歌』にしよう!」
会長辞任後、初めての伸一の指揮である。
再び、雷鳴を思わせる大拍手がうねった。
講演ばかりが指導・激励ではない。戦いは智慧である。工夫である。創造である。
どんなに動きを封じられようが、広宣流布への不屈の一念があれば、前進の道が断たれることはない。
伸一は、一曲の指揮で、皆の魂を奮い立たせようと、決意したのである。
高らかに勇壮な調べが流れ、喜びに満ちあふれた躍動の手拍子がこだました。
 
「濁悪の此の世行く 学会の……
 
彼は、まさに威風堂々と、大鷲のごとく、力強く舞った。
大東京よ、立ち上がれ! 全同志よ、立ち上がれ!と心で叫びながら。
頬を紅潮させ、大きく腕を広げ、力いっぱい手拍子を打つ壮年もいた。
目を潤ませながら、声を限りに歌う婦人もいた。
凜々しき瞳に闘魂をたぎらせる男子部も、歓喜に顔をほころばせて熱唱する女子部もいた。
皆の息はピタリと合い、生命は一つにとけ合った。
吹き荒れる嵐のなかで、この日、東京から、再び凱歌の行進が開始されたのだ。
「仏法は勝負」である。ゆえに、広宣流布の戦いは、いかなる逆境が打ち続こうが、断固として勝つことを宿命づけられているのだ。
広布の勝利王は、即人生の勝利王となり、幸せの勝利王となる。広布の峰を一つ一つ越えるたびに、幸の太陽は燦然と輝きを増す。