小説「新・人間革命」 雌伏 三十一 2017年4月29日

山本伸一は、言葉をついだ。
「意見というのは、人の数だけあるといっても過言ではない。
ましてや世代などが違えば、意見は異なって当然です。
座談会のもち方一つでも、平日の夜がいいという人もいれば、土曜や日曜の夜がいいという人もいる。
日曜の昼がいいという人も、平日の昼がいいという人もいる。
でも、どれかに決めなければならないので、より多くの人が都合のよい日を選ぶことになる。
そして、皆で協議して決まったことに対しては、自分の希望通りではなくとも、心を合わせ、成功するように最大の努力を払っていくことが大事です。
また、座談会を運営していく側の人は、参加できないメンバーのことを考慮して、別の日に、小さな単位での語らいの場をもつとか、たまには曜日を変えてみるとか、皆が平等に、喜々として信心に励めるように工夫をしていくことが必要です。
そのほかの活動の進め方や運動の在り方についても、いろいろな意見があるでしょう。
活動の方法に、絶対完璧ということはありません。
メリットもあれば、なんらかのデメリットもあるものです。
したがって、問題点があったら、皆で知恵を出し合って、それをフォローする方法を考えていくんです。
柔軟に、大きな心で、互いに力を合わせていくことが大切です」
青年たちは、大きく頷きながら話を聞いていた。
伸一は、一人ひとりに視線を注ぎ、力を込めて語っていった。
「活動を進めるうえで、いちばん心しなければならないのは、自分の意見が受け入れられないことで、失望感をいだいたり、感情的になって人を恨んだりしてしまうことです。
それは、自分の信心を破るだけでなく、広宣流布を破壊する働きになっていく。
どの団体や宗教も、多くは運動上の意見、方法論の違いから対立や憎悪を生み、分裂しています。
学会は、断じて、そんな轍を踏むようなことがあってはならない!」