小説「新・人間革命」 雌伏 三十 2017年4月28日

青年たちは、真剣な顔で、山本伸一の話に耳を澄ましていた。
「青年幹部の側は、先輩の壮年や婦人の幹部に賛成してもらうためには、まず、説得力を培っていくことです。
それにはなぜ、それが大事なのかを、明快に、理路整然と説明できなくてはならない。また、その根拠を示すことが大切です。
具体的なデータや実例を挙(あ)げることもいいでしょう。道理に適った話であれば、誰もが納得せざるを得ない。
日蓮大聖人は、『道理と申すは主に勝つ物なり』(御書1169ページ)と言われている。
その説得力を最も磨いていけるのが折伏です。
さらに、青年らしい、一途な情熱が大事です。
後継の青年が、真剣に、一生懸命に新しい挑戦を開始したいと力説している。
その心意気に触れれば、応援したいなと思うのが人情です。
結局、人の魂を揺り動かした時に、事態は大きく進展するんです。
そして、実績を積むことです。青年たちの企画・提案は斬新であり、常に新しい波動を起こしてきたということになれば、皆が進んで意見を受け入れるようになるでしょう。
つまり実証が信頼につながっていきます。
それから、一度ぐらい、意見が受け入れられなかったからといって、すぐにあきらめたり、挫けたりしないことです。
本当に必要である。大事であると思うなら、指摘された問題点を検討、改善し、何度でも案をぶつけていくことです。粘り強さが大事だよ」
伸一の言葉は、自身の体験に裏づけられていた。
彼は、1954年(昭和29年)3月、新設された青年部の室長に就任し、学会の運動の企画・運営を担うことになるが、当初、理事室は、提出した企画のほとんどに難色を示した。
後の平和文化祭の淵源となった青年部体育大会に対しても、賛成しようとはしなかった。
それが、回を重ねるにつれて皆が絶賛するようになり、やがて学会を象徴する催しとなったのである。青年の力の勝利であった。