小説「新・人間革命」 雌伏 三十五 2017年5月4日

山本伸一は、青年たちと、忌憚なく話し合えることが何よりも嬉しかった。
伸一は、彼らに大きな期待を込めて語った。
「青年には、学会の後継として、一切を担っていく重大な使命がある。
ゆえに、戸田先生は、青年を本気で育てようと訓練された。とりわけ、私には人一倍厳しかった。
大勢の前で、激しく叱咤されたこともあった。
ほかの人の失敗でも、叱責されるのは常に私だった。
特に、皆に対して、広宣流布に生きる師弟の道の峻厳さを教える時には、私を対告衆にされた。
獅子がわが子を、あえて谷底に突き落とすような訓練でした。
先生は私を、後継の師子に育てようとされたからです。
私が、首脳の幹部を厳しく指導してきたのも、これから学会の全責任を背負っていく重要な立場だからです。
最高幹部は、常に真剣勝負でなければならない。
また、何があっても、必ず勝ち抜いていく強さが必要である。
ますます成長して、立派な指導者に育ってほしい。
だから私は、広布に生きる人生の師として、これからも厳しく言っていきます。それが慈悲です。
師匠というのは、本当の弟子には厳しいものなんです。
この年になって、戸田先生のお気持ちが、よくわかります。
先生を知る人は多い。直接、指導を受けたという人もいる。
しかし、先生に仕え抜き、その遺志を受け継いで、仰せ通りに広宣流布の道を開いてきたのは私だけです。
したがって、あえて申し上げるけれども、学会のことも、先生の真実も、誰よりも私がいちばんよく知っている。
その意味からも私は、世界の同志が、また、広宣流布のバトンを受け継ぐ後世の人たちが、創価の師弟の道をまっすぐに歩み通していけるように、小説『人間革命』を書き残しているんです。
君たちは、常に、勇んで試練に身を置き、自らを磨き、鍛えてほしい。
そして、どこまでも団結第一で、共に前へ、前へと進んで、二十一世紀の学会を創り上げていくんだよ」