小説「新・人間革命」 雌伏 三十九 2017年5月10日

それは、太陽のような輝きに満ちていた。
さわやかな希望の笑顔があった。清らかな生命の光彩があった。誇らかな青春の躍動があった。
鼓笛隊総会は、メンバーの練習の成果をいかんなく発揮する華麗なる祭典となった。
プロローグでは、山本伸一が作詞した鼓笛隊愛唱歌「平和の天使」の軽快な調べに合わせ、ブルー、ピンクの旗を使ったフラッグ隊の巧みな演技が喝采を浴びた。
第一部「世界の広場」では、フランスのロワールの古城やシャンゼリゼ通り、中国の天安門広場アメリカ・ニューヨークの摩天楼、パリの凱旋門と、次々と背景が変わる舞台で、ドラムマーチやドリル演奏が、華やかに、力強く繰り広げられていく。
愛らしいポンポン隊の演技には、微笑みが広がった。
第二部「希望の行進」では、「『軽騎兵』序曲」「さえずる小鳥」の演奏のあと、交響詩「民衆」となった。
   
 水平線の彼方
  大いなる海原のうねりにも似た民衆……
   
友情出演した壮年部「地涌合唱団」、婦人部「白ゆり合唱団」、男子部「しなの合唱団」、女子部「富士合唱団」が、荘重な調べに合わせて、見事に歌い上げていく。
詩「民衆」は、一九七一年(昭和四十六年)九月、東京・墨田区日大講堂で行われた女子部幹部会を祝して山本伸一が贈った詩である。
彼はこの詩で、本来、最も尊ぶべき民衆の歴史は、常に権力者によって蹂躙され、受難と窮乏の涙で綴られてきたことを訴え、沈黙と諦観と倦怠に決別し、民衆が主役の歴史を創ることを呼びかけたのだ。
   
 僕は生涯 君のために奔る
 一見 孤立して見えるとしても
 僕はいつも君のために
 ただ君のために挑戦しゆくことを
 唯一の 誇りある使命としたい