小説「新・人間革命」 雌伏 五十四 2017年5月27日

山本伸一は、「熱原の三烈士」「さくら」と、ピアノを弾いていった。
凜々しき勇気の信仰者に育て!”“幸の桜花咲く人生の春を!との祈りを込めた演奏であった。
彼は思った。
今、この時に、求道の炎を燃やし、波浪を越えて、横浜の地までやって来た四国の同志の果敢な行動は、広宣流布の歴史に燦然と輝き、永遠に語り継がれるにちがいない。
大事なことは、学会が苦境に立った時に、いかに行動し、新しい突破口を開くかだ
伸一は、「最後に楠公を弾きます。また、お会いしましょう」と語り、さらに、ピアノに向かった。
皆、調べに耳を傾け、楠公に歌われた楠木正成・正行の父子に創価の師弟を重ねながら、心に誓っていた。
私たちは、断じて学会精神を継承していきます。いかなる事態になろうが、広宣流布の道を開き抜いていきます。
四国は負けません。創価の勝利の旗を翻してまいります!
求道の思い熱き同志の目に、涙が光った。
そして、全員で四国創価学会の万歳を三唱し、大拍手が響くなか、会食懇談会は終了した。伸一は言った。
「ありがとう! お元気で! 今日は、皆さんの船をお見送りいたします。
どうか、留守を預かるご家族の皆さん、それぞれの組織の皆さんに、くれぐれもよろしくお伝えください。
また、青年部は、お父さん、お母さんを大切に!」
四国のメンバーが神奈川文化会館を出た時には、すっかり夜の帷に包まれていた。
埠頭には、二百人余りの神奈川のメンバーが集まり、乗船する四国の同志を見送った。
音楽隊が四国の歌「我等の天地」を演奏するなか、船からは色とりどりのテープが投げられた。
次いで、神奈川のメンバーが、演奏に合わせて県歌「ああ陽は昇る」を熱唱したあと、皆で一緒に「広布に走れ」「威風堂々の歌」を大合唱した。
創価の法友の心は一つにとけ合い、歌声が星空に轟いた。