小説「新・人間革命」 雌伏 六十二 2017年6月6日

セミナー会場は、奄美の女子部の登場に沸き返った。
南海の島々で、喜々として信心に励む若きメンバーを目の当たりにして、参加者は新鮮な驚きを覚えたようだ。
彼女たちが奄美を詠った「島育ち」「月の白浜」の歌を披露すると、大拍手が起こった。
山本伸一は、セミナーから戻ってきた奄美の女子部長の長田麗や女子部の幹部らと、さらに懇談を重ねた。
長田は加計呂麻島で教員をしている女子部員の活躍や、東京に来ることを強く希望しながら、今回は参加できなかったメンバーの様子を伝えた。
伸一は、「そうか、そうか」と、うなずきながら、報告に耳を傾けた。
また、彼の方からは、壮年・婦人の中心者や草創の同志、会館の管理者などの近況を、次々と尋ねていった。
「元気に頑張っているんだね。嬉しいね」
そして、一人ひとりへの伝言と、書籍などの激励の品を、彼女に託したのである。
伸一は、語った。
「皆さんの住むそれぞれの島や地域は、小さいかもしれない。
しかし、そこを広宣流布の模範の地にしていくならば、奄美は世界中の同志の希望の星となります。
それは、皆さんが先頭に立って、世界の広宣流布を牽引していることになる。したがって、わが地域広布は即世界広布なんです。
今いる場所こそ、使命の天地であり、幸福の常寂光土であると定め、仲良く前進していってください。
日蓮大聖人は、『此を去って彼に行くには非ざるなり』(御書七八一ページ)と仰せです。
皆さんの力で、奄美から二十一世紀の広布の新風を起こしてください。
奄美、頑張れ! 負けるな、奄美!」
さらに伸一は、皆が立川文化会館を出発する時には、外に出てバスを見送った。
奄美は、彼の期待通り、日本一の模範の組織となっていく。
この時に集った友は、「あの激励が生涯の宝になりました」と語る。
友の幸せを願う励ましの言葉は、蘇生の光となって、勇気と力を呼び起こす。