小説「新・人間革命」 雌伏 六十一 2017年6月5日

奄美の女子部の代表が、「先生! これは私たちの気持ちです!」と言って、沖永良部島フリージアと、奄美大島の緋寒桜を、山本伸一に差し出した。
「ありがとう! 一足早い春の到来だね。百花繚乱の春は幸せの象徴だ。みんな
も、必ず幸せになるんだよ。私は、その姿を見ることがいちばん嬉しいし、それが、信心の正しさの証明になるんです。
どうか皆さんは、それぞれが日本一、世界一、幸せになることを誓ってください。
幸福のための信心であり、学会活動であり、広宣流布なんです」
伸一は、こう言うと、和歌を認めた色紙をメンバーの代表に手渡した。
  
  はるばると 奄美の乙女の 集いける 此の日の歴史 諸天も讃えむ
   
「では、みんなで、幸せになるとの誓いを込めて、記念写真を撮りましょう」
二組に分かれ、カメラに納まった。彼は中央に座るのではなく、メンバーを見守るように、後ろ端に立った。
撮影が終わると、彼は言った。
「皆さんの求道心あふれる姿は、創価学会の希望です。何があっても揺るがない、皆さんの強く清らかな信心こそ、二十一世紀を開く力です。
朗らかに、堂々と胸を張って、前進していきましょう」
また、館内で、「健康セミナー」が開催されていることを聞いた彼は、居合わせた幹部に言った。
「せっかく奄美から女子部が来てくれたんだから、セミナーで皆さんを紹介し、交歓のひとときをもってはどうだろうか。
きっと、参加者も喜ぶと思うが」
伸一は、東京で、一つでも多くの思い出をつくってもらいたかった。
彼女たちの求道の真心に最大の誠意で応えたかったのである。