小説「新・人間革命」 雄飛 二十五 2017年7月13日

山本伸一は、別館の外にある非常階段に向かった。役員の青年が言った。
「別館の広間の常勝会館は第二会場で、本会場の話を音声で聴けるようになっています」
「そこにいらっしゃる方々を、まず最初に激励しよう」
非常階段を上る伸一に峯子も続いた。
この階段から常勝会館に入るには、内側から鍵を開けなければならなかった。
員の青年が急いで会場に先回りし、人をかき分けてドアまで進み、鍵を開けた。
参加者は何が始まるのだろうと、その様子を見ていた。
すると、ギギィーと音をたてて会場前方の扉が開いた。
そこには、伸一の姿があった。
「やあ、お元気!」
彼は手を挙げ、マイクを手にした。
熱気に満ちた場内に、どよめきが起こった。
待ちに待った瞬間であった。皆、喜
びを満面にたたえて、伸一を見つめた。目を潤ませる人もいた。
「わざわざ駆けつけてくださってありがとう。
私と皆さんとの魂の絆は、いかなる権威権力も断つことはできません!」
ワーッと、会場を揺るがさんばかりの大歓声と大拍手が広がった。
「学会を支えてくださっているのは誰か。表舞台に立つ人よりも、陰で黙々と頑
張ってくださっている方々です。
その人こそが仏であり、真の勝利者です。
まさに皆さんです。皆さんあっての学会であり、広宣流布です」
目を腫らしながら、一言一言に大きく頷く同志たちに、伸一は深い親愛の情を覚えながら、力強く呼びかけていった。
「皆さんは、さまざまな悩み、苦しみと、日々格闘しながら、希望に燃えて折伏・弘教に奔走されている。
ここに真実の人間の輝きがあり、これこそが地涌の菩薩の姿です。再び新しい決意で、私と共に前進しましょう!」
「はい!」という決意の声が響いた。
別館の外に出ると、さらに同志が集って来ていた。
また一緒に記念写真を撮った。
激励に徹し抜いた。仏に仕える思いで。