小説「新・人間革命」 雄飛 三十 2017年7月20日

五月五日は、「創価学会後継者の日」である。
関西文化会館では、午前十一時から、高等部、中等部、少年・少女部の代表が集い、第五回「後継者の日」記念勤行会が行われた。
一年前、山本伸一は神奈川文化会館でこの日を迎えた。
未来部員の集いに出席して、メンバーを力の限り励ましたかったが、当時の状況が、それを許さなかった。
しかし、彼は今、時が来ていることを強く感じていた。
伸一は、未来部員に、ぜひとも会っておきたかった。
二十一世紀を託すために、全生命を注いで鳳雛たちを育てたかったのである。
会場に姿を現した伸一に、少年・少女部の代表から、紙のカブトが贈られた。
勤行会で、彼は訴えた。
「皆さんは、これから大地に根を張り、大樹へと育ちゆく若木である。
若木には添え木も必要であるし、水もやらねばならない。
育てるには、多くの労力を必要とする。
そのように、お父さん、お母さんも、皆さんを育てるために、厳しい現実社会で、人知れず苦労に苦労を重ねていることを知ってください。
そして、感謝の心をもつことが、人間として最も大切な要件です。
親と意見が食い違い、腹の立つ時もあるでしょう。
でも、すべてを自身の成長への励ましであるととらえていくことです。
わがままや甘えは、自分をだめにします。
しかし、我慢は自分を磨いていく。
その経験が、将来の大事な精神の財産となっていきます。
未来部の年代というものは、基本をしっかり身につけて、基礎を強固にする時代です。
基礎を築くためには忍耐が必要です。辛抱強く勉強に励むとともに、信仰の世界で、自分をつくっていくことを忘れず、広布の大樹へと育ってください」
哲学者・西田幾多郎は訴えている。
「何事も辛抱と忍耐とか第一です 一度や二度でうまく行かなくとも決して挫折してはならない 百折不倒根氣よく幾度でも又工夫をめぐらすにあり 古人も英才は忍耐にありといふ」(注)
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 「書簡集 昭和10年」(『西田幾多郎全集第18巻』所収)岩波書店