小説「新・人間革命」 雄飛 四十七 2017年8月9日

シカゴ文化祭でサチエ・ペリーは、山本伸一への手紙として認めた、自身の体験を読み上げていった。
「親愛なる山本先生! 信心を始めた時、自信も、勇気も、志もなく、ただ生活苦にあえぐ毎日でした。
信心で幸せをつかむしかないと思った私は、懸命に弘教に励みました」
一家の来し方がスライドで映し出される。
彼女は、感動に声を震わせながら叫んだ。
「先生! 私は、今、一家和楽を勝ち取り、こんなに幸せになりました。
子どもたちも立派に成長しています。
私の子どもたちを、いつか先生に見ていただきたいと願ってきました。これが、その子どもたちです!」
舞台のスポットライトが七人の子どもたちを照らした。
歌と演奏が始まった。
軽やかなリズムに合わせ、歌い、楽器を奏でる子どもたち。
母の目には涙が光っていた。その歌声は、希望の朝を告げるファンファーレであり、その調べは、幸の歓喜の音律であった。
伸一は、家族の勝利劇の舞台を、ひときわ大きな拍手で賞讃した。
世界の平和は、一人の人間革命、宿命転換から始まる。
平和の実像は、一家の和楽、幸福にこそある。
彼は、出演者らに、次々と激励の句などを詠んでいった。
そして、ペリー一家を代表して、長男に、「母の曲 誇りかがやけ 王者の子」との句を認めて贈ったのである。
子どもたちは、母の志を受け継ぎ、アメリカ社会と広布のリーダーに育っていく。
たとえば、病弱だった末娘のアユミは、経済苦のなか、大学に進んで教育の仕事に携わり、さらに大学院に学び博士号を取得。
教育者や企業・団体のリーダー、国連職員などの人材育成プログラムを提供する仕事に従事する。
また、アメリカSGIにあって、全米の婦人部長として活躍していくのである。
アメリカ広布二十周年──万人が等しく仏の生命を具えていることを説き示す日蓮仏法によって、新たなアメリカンドリームが実を結び、多くの幸の人華を咲かせていたのだ。