小説「新・人間革命」 暁鐘 六 2017年9月6日

山本伸一は、ここで、ドイツの理事長たちから相談を受けていた事柄の一つである、離婚の問題について言及していった。
欧米では、離婚が多く、メンバーから相談を受けることもあるという。
理事長らは、仏法者として、これに、どう対処していけばよいのか、懇談の際、伸一に尋ねたのである。
彼は、この問題について、考え方の原則を、あらためて確認しておこうと思った。
「社会では離婚に関する問題が多いようですが、プライバシーについては、私たちは深く立ち入るべきではないし、干渉めいたことも慎むべきです。
それぞれが責任をもって考えていく問題です。
ただし、他人の不幸のうえに自分の幸福を築いていくという生き方は、仏法にはないということを申し上げておきたい。
ともかく、よく話し合い、夫婦が信心をしている場合には、解決のために、互いにしっかり唱題し、どこまでも子どもの将来のことなどを考えて、できうる限り歩み寄っていく努力をお願いしたい。
離婚をしても自身の宿命というものを変えることはできません。
また、リーダーの心構えとして、悩める友が相談に来た場合、その人の人格、人権を尊重して、いっさい他言するようなことがあってはなりません。
その人のプライバシーを、自分の家族や友人も含め、第三者に軽率に語るようなことは、絶対に慎むべきです。
そんなことがあれば、本人に迷惑をかけるだけでなく、自分も、また学会も、信頼を失うし、幹部としては失格者であることを銘記していただきたい。
これは、ドイツに限らず、日本においても、どの国にあっても、リーダーが厳守すべき鉄則であることを確認しておきます」
伸一は、メンバーが疑問に思っていることや聞きたいことについて、わかりやす
く、明快に語っておきたかった。そのために、フランクフルト入りした時から、皆に声をかけ、話に耳を傾けてきた。
皆の心に宿った疑問を解決できてこそ、晴れやかな大前進がある。