小説「新・人間革命」 暁鐘 十八 2017年9月21日
これには、建国千三百年を祝賀する意義も込められ、ソフィア市郊外の名峰ビトシャ山を望む丘の上で、盛大に開催された。
丘には、三十メートルをはるかに超える「平和の旗」の記念塔がそびえ立つ。
「平和の旗」の集いは、一九七九年(昭和五十四年)の「国際児童年」を記念して始まったものである。
第一回の集いには、ブルガリアはもとより、世界七十九カ国から、二千五百人の子どもたちが参加して交歓し、平和を誓い合った。
日本からも体の不自由な子どもたちがブルガリアを訪れ、代表が自作の詩「生きる」を朗読している。
世界が絶讃した集いであった。
この催しを実現させる大きな力となったのがジフコワ議長であった。
彼女は、世界を回って、平和を、子どもの未来を守ることを訴え続けてきたのだ。
午後五時過ぎ、伸一と峯子がジフコワ議長と共に席に向かうと、色とりどりの民族衣装を着た子どもたちが、白と緑と赤のブルガリア国旗の小旗を振って歓迎してくれた。
一行が着席し、合唱が始まった。
その歌の意味は、“子どもの笑いと喜びで全世界を満たしたい。
ビトシャ山から友情の翼をつけて、空高く、世界へ飛んでいきましょう”であるという。
歌あり、民族舞踊あり……。伴奏にも、古くから伝わる笛や太鼓が登場し、どの演目にも、自国の文化への誇りがあふれていた。
ジフコワ議長は、一つ一つの演技、演奏に対して、「よくできたわ。すばらしいわよ」などと声をかけ、大きな拍手で応える。
そこには、子どもを慈しみ、守ろうとする、優しく、強い、“母の顔”があった。