小説「新・人間革命」 暁鐘 四十一 2017年10月19日

翌七日、夏季研修会の一環として、ヨーロッパ広布二十周年の記念総会が開催された。
山本伸一は、この席でも、御書を拝して、参加者と共に、仏法の法理を研鑽し合った。
そのなかで彼は、一切衆生が「仏」の生命を具えていることを述べ、生命の尊厳を説く仏法は、古来、平和主義であったことに言及。
戦時中、日本にあって、国家神道を精神の支柱に戦争を遂行する軍部政府の弾圧と戦った学会の歴史も、それを証明していると訴えた。
さらに、平和を信条とする仏法者の、社会での在り方を示していった。
「皆さんは、『一切法は皆是仏法なり』(御書五六三ページ)との御聖訓を深く心に体して、それぞれの国にあって、良識豊かな、人びとの模範となる、良き市民、良き社会人であってください。
われわれは、暴力を絶対に否定します。その信念のもとに、各国各地にあっては、その伝統並びに風習を最大に尊重し、社会に信頼の根を深く張っていっていただきたい。
そして、世界の友と、心と心を結び合い、平和をめざしていただきたいのであります」
次いで伸一は、宇宙の根源の法たる妙法を具現した、御本尊の力について語った。
「人間の心ほど、瞬間、瞬間、微妙に変化し、複雑極まりないものはない。
その心を、いかに強く、揺るぎないものにしていくかによって、人生の充実、幸福も決まっていく。
また、人生には、なんで自分は、こんな目に遭わなければならないのかと思うような、宿命・宿業の嵐に遭遇することもある。
それを乗り越えていく、何ものにも負けない強い心を培うための信心なんです。
妙法という宇宙根源の法を具現したものが御本尊です。
私どもの信力、行力によって、南無妙法蓮華経の御本尊の仏力・法力に、わが生命が感応して、大生命力が涌現し、困難の厚き鉄の扉も必ずや開くことができる」
フランスの思想家モンテーニュは言う。
「勇猛さは、足と腕がしっかりしているということにはなく、心と魂の堅固さにある」(注)
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 『世界の名著19 モンテーニュ』荒木昭太郎訳、中央公論社