小説「新・人間革命」 暁鐘 四十二 2017年10月20日

山本伸一は、ここで、仏法で説く「発心」について語っていった。
「『発心』とは、『発菩提心』という意味である。簡単に申し上げれば、悟りを求める心を起こすということであり、成仏への決心です。
人生をより良く生きようとするには、『汝自身とは何か』『汝自身のこの世の使命とは何か』『汝自身の生命とは何か』『社会にいかなる価値を創造し、貢献していくか』等々、根源的な課題に向き合わざるを得ない。
その解決のために、求道と挑戦を重ね、仏道修行即人間修行に取り組んでいくことが『発心』であり、それは向上心の発露です」
彼は、仏法の法理や仏法用語を、いかにわかりやすく、ヨーロッパの友に伝えるか、心を砕いていた。
どんなに深遠な法理であっても、人びとが理解できなければ、結局は、価値をもたらすことはないからだ。
仏法の現代的展開にこそ、人類の至極の智慧を、世界共通の精神の至宝とする方途がある。
翌八日には、夏季研修会の掉尾を飾って、友好文化祭が開催された。
 
イギリスの同志は熱唱した。
 
  心と心のふれあいに
  強き絆に結ばれて
  自由の道を拓きゆく
  たとえ道は長くとも
  希望の光かかげつつ
  
デンマークノルウェースウェーデンの同志が、花柄のスカーフをなびかせて踊れば、スペインの同志は陽気に舞い、黒いハットを場内に投げる。
ベルギーのメンバーは、「同志の歌」をバックに創作舞踊を披露。西ドイツ、スイス、ギリシャ……と続く。
私は負けない! 断じて勝つ!──広宣流布へ、皆の心は一つにとけ合い、歌声が勝利山(サント・ビクトワール山)にこだまする。欧州は一つになった。
それは、世界の平和をめざす、人間の魂と魂の連合であった。