小説「新・人間革命」 暁鐘 四十九 2017年10月28日

三人の青年たちのうち、一人の女子部員が口を開いた。
「私は一年前に信心を始めました。私の住む町では、信心をしているのは私だけです。
座談会の会場にいくにも数時間かかります。
こんな状況のなかでも、地域に仏法理解の輪を広げていくことはできるのでしょうか」
すかさず、山本伸一は答えた。
「心配ありません。あなたがいるではありませんか。すべては一人から始まるんです。
あなた自身が、その地域で、皆から慕われる存在になっていくことです。一本の
大樹があれば、猛暑の日には涼を求めて、雨の日には雨宿りをしようと、人びとが集まってきます。
仏法を持ったあなたが、大樹のように、皆から慕われ、信頼されていくことが、そのまま仏法への共感となり、弘教へとつながっていきます。
自身を大樹に育ててください。地域の立派な大樹になってください」
電車がパリ会館のあるソー駅に着くころには、詩はすべて完成した。
題名は「我が愛する妙法のフランスの青年諸君に贈る」とした。
一行が会館に到着すると、メンバーによって、直ちに翻訳が開始された。
伸一は、ヨーロッパ会議議長の川崎鋭治らと打ち合わせを行った。彼は言った。
「青年部の第一回代表者大会が行われる今日を、『フランス青年部の日』としてはどうだろうか。
それを、川崎さんの方から、皆に諮ってみてください」
この日、パリ会館では、二日目となる友好文化祭や、フランス最高協議会が行われ、午後五時半、フランス青年部代表者大会が、意気軒昂に開催された。
この席上、川崎が、「六月十四日を『フランス青年部の日』に」という伸一の提案を伝えると、賛同の大拍手が沸き起こった。
さらに、フランス男子部のリーダーによって、詩「我が愛する妙法のフランスの青年諸君に贈る」が読み上げられていった。
皆、伸一の魂の叫びを聴く思いがした。