小説「新・人間革命」 暁鐘 四十八 2017年10月27日

地下鉄の中でも、山本伸一の口述は続いた。
同行のメンバーは、懸命にメモ帳にペンを走らせる。
チュイルリー駅から三つ目のシャトレ駅で、郊外に向かうB線に乗り換える。
動く歩道でも、電車を待つ間も口述を重ねた。
 
「今 社会は
 夕陽の落ちゆくごとく
 カオスの時代に入った
 故に我らは今
 新しき太陽の昇りゆくごとく
 平和と文化の
 新生の歌と曲を奏でゆくのだ
 多くの新鮮な
 友と友の輪を広げながら
 老いたる人も 悩める人も
 求める人も 悲しみ沈む人も
 すべての人の心に光を当てながら
 すべての人の喜びを蘇生させながら
 我らは絶えまなく
 前進しゆくのだ」
 
彼の瞼に、新世紀の広布に生きる、凜々しき青年たちの雄姿が浮かんだ。
 
「新しき世界は
 君達の
 右手に慈悲 左手に哲理を持ち
 白馬に乗りゆく姿を
 強く待っている」
 
電車を乗り換えてほどなく、伸一の口述は終わった。
実質、十分ほどであった。
同行のメンバーが、走り書きしたメモを急いで清書する。
彼は、それを見ながら、推敲し、ペンで直しを入れていく。
その時、「センセイ!」という声がした。
三人のフランス人の青年男女が立っていた。
数百キロ離れたブルターニュ地方か
ら、パリ会館へ向かうところだという。
「ご苦労様。遠くから来たんだね。長旅で疲れていないかい?」
青年を大切にしたいという思いが、気遣いの言葉となった。
青年こそ希望であり、社会の宝である。