小説「新・人間革命」暁鐘 五十六 2017年11月6日

 山本伸一は、御書を拝し、指導していった。  
 
「御聖訓には『我等が生老病死に南無妙法蓮華経と唱え奉るは併ら四徳の香を吹くなり』(御書七四〇ページ)とあります。
宿命の暗雲に覆われ、不幸に泣いて生きねばならない人もいる。
いや、多くがそうかもしれない。  
しかし、私どもは、南無妙法蓮華経と唱えることによって、常楽我浄の香風で、その苦悩の暗雲を吹き払っていくことができる。  
また、『南無妙法蓮華経歓喜の中の大歓喜なり』(同七八八ページ)です。人生には、いろいろな楽しみがあるでしょう。
しかし、自身が仏であると覚知し、南無妙法蓮華経と唱えていくことこそが、歓喜のなかの大歓喜であるとの御断言です。  
欲しいものを手に入れたり、名誉や名声を得たりする喜びは、外からのものであり、その喜びは一瞬にすぎず、決して永続的なものではありません。  
それに対して、唱題に励むならば、自身の生命の大宮殿が開かれ、心の奥底から、泉のごとく、最高の喜びの生命、すなわち大歓喜が湧き出でてきます。
しかも、いかなる試練にさらされ、逆境に立たされようが、その歓喜の泉が涸れることはありません。  
さらに、御書には『真実一切衆生・色心の留難を止むる秘術は唯南無妙法蓮華経なり』(同一一七〇ページ)とあります。
南無妙法蓮華経と唱える私どもを、諸天善神は、三世十方の諸仏は必ず守ると約束されている。
したがって、題目を唱え抜いていくことが、いかなる難も防ぐ秘術となり、それによって人生の最高の幸福を満喫して生きることができる。  
御本尊とともに、唱題とともに生き抜いていくなかに、最高の所願満足の人生があることを確信して、仏道修行に励み、自らの生命を磨いてください。
人の言動に右往左往したり、一喜一憂したりするのではなく、唱題に徹して、『私は題目が大好きである』といえる皆さんであってください」  
「唱題の人」とは、晴れ渡る青空の心の人であり、大歓喜の人、幸福の人である。