小説「新・人間革命」暁鐘 六十一

山本伸一ホイットマンの生家を後にした午後四時ごろ、ニューヨーク市にある高校の講堂では、日本からの親善交流団とアメリカのメンバーによる、日米親善交歓会が行われていた。
ニューヨークのコーラスグループが「スキヤキ・ソング」(上を向いて歩こう)、「森ケ崎海岸」を日本語で歌い、また、バレエやダンスを披露すると、日本の交流団は、日本各地の民謡や日本舞踊で応え、心和む文化交流のひとときが過ぎていった。
そして、伸一の詩「我が愛するアメリカの地涌の若人に贈る」が発表されたのである。
英語で朗読する青年の声が響いた。
 
「今 病みゆく世界の中にあって
 アメリカ大陸もまた
 同じく揺れ動きつつ
 病みゆかんとするか
 かつてのアメリカの天地は
 全世界のあこがれと
 新鮮にして
 自由と民主の象徴であった」
 
詩のなかで伸一は、妙法を護持した青年には、この愛する祖国アメリカを、世界を、蘇生させゆく使命があると訴えた。
 
「声高らかに妙法を唱えながら
 そして社会の大地に
 足を踏まえながら
 根を張りながら
 花を咲かせながら
 あの人のために
 この人のために
 あの町の人のために
 あの遥かなる友のために
 走り語り訴えつづけていくのだ」
 
さらに、あらゆる人びとが共和したアメリカは「世界の縮図」であり、ここでの、異なる民族の結合と連帯のなかにこそ、世界平和への図式があることを詠っていった。
人類の平和といっても、彼方にあるのではない。
自分自身が、偏見や差別や憎悪、反目を乗り越えて、周囲の人たちを、信頼、尊敬できるかどうかから始まるのだ。