小説「新・人間革命」 暁鐘 七十二 2017年11月25日

山本伸一は、ミキ・カーターに語った。
「これからも、水の流れるごとく、信心に励み抜いてください。
一生成仏の要諦は信心の持続にあります。
ゆえに、日蓮大聖人は、『受くるは・やすく持つはかたし・さる間・成仏は持つにあり』(御書一一三六ページ)と仰せなんです。
広宣流布という理想に向かい、人びとの幸せのために生きていってください。
そこに自身の幸せもあるんです」
カナダの作家モンゴメリは、記している。
「理想があるからこそ、人生は偉大ですばらしいものになる」(注)
翌二十四日、伸一はトロント市内のキング・ストリート・ウエストにあるトロント会館を訪問した。
百五十人ほどの代表と勤行し、皆の健康と幸福を祈念するとともに、「自信と希望と勇気をもって、『生涯、不退転』を合言葉に進んでいただきたい」と訴えた。
このあと伸一は、メンバーと一緒に、ナイアガラ瀑布を見学した。
二十一年前にも、ここを訪れていたが、轟音とともに水煙を上げて落下する瀑布の景観は、いつ見ても雄壮そのものであった。
彼は、しばし見入り、写真にも収めた。
伸一の脳裏に、あの日、この滝に懸かる虹を見ながら思ったことが、鮮やかに蘇った。
――満々たる水が、絶え間なく流れ、勢いよく落下し続けているからこそ、水煙が上がり、太陽に照らされれば虹が懸かる。
同様に広宣流布の道にあっても、胸中に満々たる闘志をたたえ、日々、間断なき前進を続ける人には、生命の躍動があり、その頭上には、常に希望の虹が輝く。
彼は、たった一人から発展を遂げたカナダ広布の虹のスクラムを思いながら、「行動即歓喜」であり、「行動即希望」であると、しみじみと実感するのであった。
さらに一行は、カナダ独立のヒロインと仰がれるローラ・セコールの家も訪ねた。
ナイアガラ瀑布から十五キロほどのところに、歴史の舞台となった、その家はあった。
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 L・M・モンゴメリ著『アンの青春』松本侑子訳、集英社