小説「新・人間革命」 勝ち鬨 五 2017年12月12日
十条潔が亡くなった十八日の夜には、十条家としての通夜が、また、翌十九日には告別式が営まれた。
山本伸一は、すべてに参列し、追善回向の唱題を捧げた。
また、二十四日夜には、新宿文化会館で東南アジア八カ国・地域のメンバーと勤行し、十条の遺徳を偲ぶとともに、東洋広布の未来展望について語り合った。
伸一の行動に休息はなかった。
さらに同日、東京戸田記念講堂で開催された新出発の本部幹部会に出席した。
その翌日から八月上旬まで、長野を訪問し、会員の激励に徹し抜いた。
そして、八月十七日、明石康国連事務次長と東京・渋谷の国際友好会館(後の東京国際友好会館)で会談し、10・24「国連デー」や、世界平和の推進と文化の向上を図るうえでの、日本の役割などについて語り合った。
世界の平和を実現していくには、国連が力をもち、国連を中心に各国が平等の立場で話し合いを重ね、進んでいかなければならないというのが、伸一の一貫した主張であった。
彼は、明石事務次長に言明した。
「私どもは、国連支援のために全力を尽くします。世界の平和を築き、飢えや貧困、疾病から人間を守ることこそ、生命の尊厳を説く宗教者の使命であると考えるからです」
人びとの現実の不幸を、いかに打開し、幸福を実現していくか──そこから、日蓮大聖人の立正安国の戦いは始まっている。
仏法者の宗教的使命は、この立正安国という社会的使命の成就をもって完結するのである。