小説「新・人間革命」 勝ち鬨 六 2017年12月13日

山本伸一は、明石康国連事務次長とは十八回の会談を重ねることになる。
その間に、学会は、国連と協力して、「現代世界の核の脅威」展、「戦争と平和展」「現代世界の人権」展などを、世界各地で開催していった。
さらに、一九九二年(平成四年)には、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の事務総長特別代表となっていた明石から、中古ラジオの支援要請があり、学会青年部は「ボイス・エイド」(カンボジア・ラジオ支援キャンペーン)を展開し、二十八万台余りのラジオを寄贈した。
それは、カンボジア内戦後初の総選挙に、大きな貢献を果たした。
八一年(昭和五十六年)八月下旬、伸一は、第二回SGI総会などに出席するため、ハワイ・ホノルルへ飛んだ。
そして、世界各国・地域の代表七千五百人が集ったこの総会で記念講演を行い、最後にこう訴えた。
──SGIは、日蓮大聖人の仏法を根本としながら、平和と文化と教育の大路線を邁進していきたい。
そして、国連を一段と支持し、ともどもに支援してまいりたい。
また、滞在中、ハワイ大学の構内にあるアメリカ国立東西センターを訪問し、仏法の平和と融合の哲学を基調に対話を重ねた。
広宣流布」即「人類の幸福と平和の実現」こそが、われら仏法者の誓願である。
宗門では、十月十日から十六日まで、日蓮大聖人第七百遠忌大法会が営まれた。
伸一は法主・日達から、この慶讃委員長の任命を受け、日顕法主となってからも、その責任を担うことになっていた。
彼は、広宣流布のために僧俗和合を願い、誠心誠意、その責務を果たし
ていった。
すべての行事は、厳粛かつ盛大に執り行われ、大法会は幕を閉じた。
一方、前年九月に、「宗内の秩序を乱した」として、約二百人が処分された正信会は、さらに宗門批判を強めていった。
そして、この八一年一月、彼らは日顕と宗門を相手取って裁判所に提訴するなど、対決は激化し、ますます熾烈な争いとなっていった。