小説「新・人間革命」  勝ち鬨 十六 2017年12月25日

山本伸一は、創価学会は民衆の歓喜スクラムであり、学会活動の原動力は一人ひとりの歓喜であることを確認しておきたかった。
最後に彼は、「『信心とは随喜である』を合言葉に、共に喜びの大行進を開始していきましょう!」と呼びかけ、あいさつとした。
午後六時前、四国青年部代表八十人ほどのほか、十人ほどの愛媛県幹部も参加し、研修道場で懇談会が始まった。
青年部としての活動の取り組みなどが話題にのぼり、話が一段落した時、大和田興光が立ち上がった。
「先生! 四国男子部の愛唱歌を作りました。お聴きください」
大和田をはじめ、主だった青年たちの目は腫れぼったく、充血していた。
皆で夜を徹して作ったのであろうと、伸一は思った。
「わかりました! 曲名は?」
「『黎明の歌』です」
伸一は、微笑みながら言った。
「『ああ黎明の時が来た』とか、誰でも考えそうな歌詞では、新鮮味がないよ。
それでは夜明けは遠いからね」
すぐに歌詞が書かれた紙が差し出され、カセットデッキから歌声が流れた。
  
 ああ黎明の 時来る
  魁 今と 走りゆけ……
  
「やっぱり、『ああ黎明』か……」  笑いが広がった。
伸一は、歌詞に目を通した。
「いい歌だね。でも、いい言葉だけ寄せ集めてきた感じがするな」
冗談交じりに語ると、青年たちは苦笑した。制作の過程を見られてしまったような思いがしたのだ。
四国男子部長の高畑慎治が、声をあげた。
「筆を加えて、ぜひ魂を入れてください」
真剣な眼差しであった。新しい時代を切り開きたいという志からほとばしる、青年の気迫を感じた。四国は「志国」でもあった。