小説「新・人間革命」  勝ち鬨 十七 2017年12月26日

山本伸一は、青年たちを見ながら言った。
「君たちの希望なら、私も手伝います。手を入れてもいいかい?」
「はい!」という皆の声が返ってきた。
「では、一緒に、永遠に歌い続けられる最高の歌を作ろう」
そのまま歌詞の検討に入っていった。
「まず、冒頭の『ああ黎明の 時来る』だが、"黎明"という言葉は、学会歌でも、一般の寮歌などでも、頻繁に使われてきた。
歌は出だしが大事だよ。最初の一行が勝負なんだ。太陽や月の光が、ぱっと広がっていくような、鮮やかな色のイメージが必要だ。
この歌は、紅のイメージかな。冒頭は、『ああ紅の……』としてはどうだろうか。
曲名は『紅の歌』だ。
曲調も、明るく力強く、歌い進むにつれて、今までにない斬新さが出るようなものにしたい。
たとえば、こんな感じにしてはどうかね」
伸一はハミングした。作曲を担当する杉沼知弘が、その場で譜面に起こした。
これで曲のイメージも決まった。
「曲は、今までのものを踏まえながらも、時代の先端を行く、新しいものを生み出してほしいな。
曲だけ聴いても、"ああ、いいなー"と皆が思えるものにしたいね。
率直に言わせてもらえば、忙しく動き回り、落ち着きがないという印象の曲ではなく、悠々、堂々とした曲にしたい。
また、無理に皆に歌わせるのではなく、皆が歌いたくなるような歌にしようよ」
懇談会は、歌作りの場となっていった。
「この『障魔の嵐』という言葉も、工夫しよう。『驕る障魔よ』としてはどうかな。
歌詞は、これまでに使われてきた類型化された表現にすがるのではなく、常に創意工夫を重ね、新鮮であることが大事だよ。
私たちがめざす世界広布も、また立正安国も、これまでの概念ではとらえきれない面がある。
過去に類例のない、全く新しいものだからだ。
したがって、それを示すには、必然的に新しい表現が求められる」