小説「新・人間革命」 勝ち鬨 二十六 2018年1月9日

最も苦しんだ同志のところへ駆けつけよう! 一人ひとりと固い握手を交わす思いで、全精魂を込めて、生命の底から励まそう!
山本伸一が、九州の大分空港に降り立ったのは、十二月八日の午後のことであった。
四国、関西、中部等を巡った激闘の指導旅を終え、東京に戻って六日後のことである。
大分訪問は、実に十三年半ぶりであった。
彼は、広宣流布の勝利の上げ潮を築くために、「今」という時を逃してはならないと、強く心に言い聞かせていた。
「正信」の名のもとに、衣の権威を振りかざす邪信の僧らによって、どこよりも非道な仕打ちを受け、苦しめられてきたのが、大分県の同志であった。
「御講」などで寺に行くと、住職は御書ではなく、学会の中傷記事を掲載した週刊誌を使って、「学会は間違っている。謗法だ!」と言うのだ。
そして、脱会したメンバーが学会員に次々と罵詈雑言を浴びせ、そのたびに場内は拍手に包まれるのだ。
それを住職は、ほくそ笑んで見ているのである。老獪この上なかった。
学会を辞めて寺につかなければ、葬儀には行かないと言われ、涙ながらに、会館に訴えてくる人もいた。
また、あろうことか、葬儀の席で学会攻撃の暴言を投げつける悪侶もいたのである。
遺族の悲しみの傷口に塩を塗るような、許しがたい所業であった。
伸一は、そうした報告を受けるたびに、胸が張り裂ける思いがした。同志がかわいそうで、不憫でならなかった。
負けるな! 必ず勝利の朝は来る!
彼は心で叫びながら、題目を送り続けた。
空港に来ていた九州方面や大分県の幹部たちは、伸一の姿を見ると、「先生!」と言って駆け寄って来た。
「さあ、戦うよ! 大分決戦だ。大逆転の栄光のドラマが始まるよ!」
師子吼が放たれた。皆、目を輝かせ、大きく頷いた。どの顔にも決意がみなぎっていた。
苦節のなかで培われた闘魂は、新しき建設への限りない力となる。