小説「新・人間革命」 勝ち鬨 三十二 2018年1月16日

婦人部のメンバーは、真剣な面持ちで、山本伸一の次の言葉を待った。
「若手の婦人部幹部は、未知への挑戦の意欲に燃えているし、先輩には豊富な体験と実践経験のなかで培ってきた考えがある。
両者のギアが?み合い、円滑に進んでいくには、潤滑油になっていく存在も必要です。
たとえば、世代的にも中間ぐらいで、双方の考えを十分に理解し、意思の疎通が図れるように努めてくれる人です。
また、娘が母親に対する時も、お嫁さんがお姑さんに対する場合も同じですが、若手幹部は先輩幹部の言うことを、真っ向から否定したりするのではなく、まず、『はい』と言って、素直に聞いていく姿勢が大事です。
そのうえで、こういう考え方もあると思うと、自分の意見を述べていくんです。
それを、頭ごなしに、つっけんどんな言い方で否定すれば、相手もこちらの話を聞いてくれなくなる。
反対に、優しく頷いて聞いていけば、相手だって嬉しい。
年配になればなるほど、その傾向は強まっていきます。
人間の心の機微を知り、聡明に対応していくことができるかどうか──これは、リーダーに問われる大切な要件です」
広宣流布のリーダー像は、新たなる前進の段階に入って若手幹部が誕生し、世代
交代が進められることによって、大きく変わりつつあった。
リーダーには、新たな開拓力とともに、皆の力を引き出し、全体の調和が図れる指揮者(コンダクター)としての役割がより求められていた。
広宣流布の教団である学会のリーダーには、弘教の力や指導力、率先垂範の行動が必要であることはいうまでもない。
そして、さらに重要視されるのが、誠実、真剣、良識、勤勉、配慮など、人間としての在り方であり、どれだけ信頼を勝ち得ていくかである。
信仰のいかんは人間性に表れる。創価学会が人間革命の宗教である限り、「あの人がいるだけで安心できる」と言われる、人格の輝きこそが、リーダーの最大の要件となる。