小説「新・人間革命」〉 勝ち鬨 五十九 2018年2月17日


喜びにあふれた、はつらつとした「田原坂」の歌声が、晴れた空に広がっていった。
熊本の同志たちは、熱唱しながら、悪僧らとの攻防と忍耐の日々が脳裏に浮かんでは消えていった。
しかし、今、皆が勝利の喜びを?み締めていた。
山本伸一は、熊本の宝友の敢闘に対して、"おめでとう! ありがとう!"と、心で何度も叫びながら、共に合唱した。
   
  天下取るまで 大事な身体
  蚤にくわせて なるものか
    
合唱が終わると、伸一は提案した。
「凱歌は、高らかに轟きました。今、私たちは、見事に田原坂を越えました。
万歳を三唱しましょう! 皆さんの大勝利と、二十一世紀への熊本の門出を祝しての万歳です」
皆、大きく両手を振り上げ、胸を張り、天に届けとばかりに叫んだ。
「万歳! 万歳! 万歳!」
カメラマンがシャッターを切った。
この熊本での写真は、十七日付の「聖教新聞」に、二・三面を使って大きく掲載された。
無名の庶民による広布の凱歌の絵巻が、また一つ、描かれたのである。
この日、伸一は、城南、天草の同志の代表に歌を贈った。
 
 「妙法の 城の南に 嵐をば   耐えに耐えたる 友や尊し」
 「天草に 老いも若きも 堂々と  広布に生きゆく 笑顔忘れじ」
  
伸一が、九日間にわたる九州指導を終えて東京に戻ったのは、十二月十六日であった。
そして二十二日には、神奈川の小田原、静岡の御殿場方面の代表が集い、神奈川研修道場で開催された勤行会に出席した。
これらの地域でも、悪僧らによって学会員は中傷され、非道な仕打ちを受けてきた。しかし、師弟の誓いに生きる同志は、決して負けなかった。師弟は魂の柱である。