小説「新・人間革命」 勝ち鬨 五十八 2018年2月16日

 山本伸一の話が終わると、会場には大きな拍手が広がった。
なかでも、城南、天草の同志の多くは、感涙を拭い、?を紅潮させ、立ち上がらんばかりにして、決意の拍手を送り続けるのであった。
自由勤行会は、感動のなかに幕を閉じた。
参加者は、熊本文化会館を出ると、足早に会館から歩いて二分ほどのところにある壱町畑公園に向かった。
伸一の提案で、ここで記念撮影をすることになっていたのである。
公園には、櫓が組まれていた。千五百人という大人数の撮影となるため、高い場所からでないと、全員がカメラに納まりきらないのである。
皆が公園に集まったところに、伸一が姿を現した。
うららかな春を思わせる陽気であった。
「さあ、一緒に写真を撮りましょう!
皆さんは耐えに耐え、戦い、勝った。まことの師子です。晴れやかな出発の記念撮影をしましょう。
この写真は、『聖教新聞』に大きく載せてもらうようにします」
歓声があがった。伸一は、皆に提案した。
「皆さんは、試練の坂を、見事に越え、"勝利の春"を迎えた。
一緒に、胸を張って、『田原坂』を大合唱しましょう!」
熊本の愛唱歌ともいうべき、郷土の誇りの歌である。
ゆっくりとした、力強い、歌声が響いた。
    
 雨はふるふる 人馬はぬれる   越すにこされぬ 田原坂
 右手に血刀 左手に手綱   馬上ゆたかな 美少年
    
皆、勤行会での伸一の指導を?み締めながら、"これからも、どんな苦難の坂があろうが、断固、越えてみせます!"と誓いながら、声を限りに歌った。
同志の目は、決意に燃え輝いていた。決意は、強さを引き出す力である。