小説「新・人間革命」  勝ち鬨 八十四 2018年3月19日

山本伸一は、すぐに、「かまくら」づくりに励む同志への感謝の思いを和歌にして、色紙に認めて贈った。
 
 「かまくらを つくりし友の 嬉しさよ
    秋田に春の 曲はなりけり」
 
伸一は、峯子と共に「かまくら」を訪れた。
「おじゃましますよ」
中は四畳半ほどの広さであろうか。絨毯が敷かれ、ロウソクがともされていた。
案内してくれた人に、伸一は言った。
「幼いころから、『かまくら』に入りたいと思っていました。
夢が叶って本当に嬉しい」
心づくしの甘酒に舌鼓を打っていると、外から、かわいらしい歌声が聞こえてきた。
   
  雪やこんこ 霰やこんこ……
   
地元の少年・少女部員の合唱団らであった。
「ありがとう!」
伸一は、握手を交わし、一緒に写真を撮った。
さらに中等部員や、岩手県から駆けつけた女子部員らとも、相次ぎカメラに納まった。
また、「かまくら」をつくってくれた同志を讃え、「かまくらグループ」と命名した。
一瞬の出会いでも、発心の旅立ちとするために心を砕く──それが励ましの精神である。
学会にあって「日本海の雄」「東北の雄」といわれてきた秋田が、今、未来へと大きく飛翔しようとしていた。
一月十四日夜、雪のなか、県内千五百人の代表が、伸一のいる秋田文化会館に喜々として集い、第一回県青年部総会が開催されたのである。
席上、九月に秋田の地で第一回世界農村青年会議を、明年五月に野外会場を使って友好体育祭を開催することなどが発表された。
さらに、伸一の提案を受け、この日の参加者全員をもって「二〇〇一年第一期会」とし、同年の五月三日をめざして、前進していくことが伝えられた。
皆、一つ一つの発表に心を弾ませ、希望の翼を広げながら、決意を新たにした。